講師:馬場利子さんからいただいた回答(一部)

H26.11.304回講演会「私たちが作る子供の未来」アンケート:お答え(1)

 

<質問>

・なぜ「放射能を正しくこわがろう」と言う人たちは医療被曝を比較対象にするのか。身体に害があってもそれ以上の生活上の利益が見込まれるので医療は許されているのですが、一方的に害しかないものを示すのには不適当だと思います。それについてはどう考えられますか?

 

【お答え】

どんな時も医療被曝をしてはいけない、と伝わってしまったとしたら、私の言葉足らずで、伝え方が良くなかったのだと思います。私がお伝えしたかったのは、消費者(医療にかかる人)の中に放射線のリスクを知らず、レントゲンを撮れば病気の有無が分かるからと不必要な検査も受け入れてしまう傾向が見受けられる事をお伝えしたかったのです。また、日本の世界一高い医療被曝の原因は、医師(医療機関)の故意である無しに関わらず、出来高払いの日本の医療報酬制度が過剰なレントゲン検査を助長させている事は、長年指摘されています。

おっしゃる通り、原発事故による放射線被爆は『一方的に害しかないもの』と考えられる人は、放射線による細胞レベルの生き物への影響をしっかりと理解していらっしゃる方だと思います。

医療被曝も適切な診断のための検査ならば、利するところの方が大きいことは言うまでもありません。

医療被曝について、1つの例をお話しします。保険点数を審査し、医療報酬の支払いをリサーチしている医師(主に大学病院に長く勤務した医師たちで定年退職をした人々が多く担当しています)から「骨折の通院で毎週、レントゲン検査をしても、医療保険の点数は通ってしまう。だけど、骨折の自然治癒期間は年齢と骨折状態にもよるが、少なくとも23週間かかる訳だから、1週間でレントゲンを撮って治っているという医者は居ない。いたとすれば、骨折でなかったか、骨化現象を読み取れない医者だという事を患者は知らないし、僕たちも報酬点数で認められていれば、指摘する事も出来ない。今の保険医療は、薬をだす、検査をたくさんするものが儲かる仕組みになっていて、その被害を受けるのは患者さんと保険料を支払っている国民という事になる・・」

そして、もう1点。私たちは原発事故による放射線被爆は『一方的に害しかないもの』と考えています。しかし、そうでない人が日本にはたくさんいる事も承知して地域で放射能(放射線被ばく)について、伝えなくてはいけないという点です。

放射性被爆がなぜ危険なのかを、義務教育でも教わらない限り、「放射能は出るけど、微量なら安全だし、第一、電気を得るためには仕方がない事」だと考える人たちは、原発事故による放射線被爆は『一方的に害しかないもの』とは考えていないのだと思います。

メリットとデメリットを考える時に、最も基本となる事は、正しい知識と情報だと思います。

私の話の伝え方が充分でなかった点を、お詫びし、補足をさせていただきました。

 

<質問>

原発事故があった場合(全国54ヶ所どこかで)日本の中でどこが安全ですか?夏冬で風の向きでかなり変わりますか?愛知県名古屋市は安全ですか?

【お答え】

原発事故を浜岡原発事故、と想定されていると思います。基本的には偏西風から考えて、日本であれば、西日本に避難する方が安全です。おっしゃる通り、季節によっても、昼夜の時間によっても風向きの違いがあります。

事故の規模にもよりますが、愛知県に逗留先があれば、いったん、そこに避難し、それから情報収集する方法を執られれば良いと思います。磐田市から名古屋市は約60キロ、浜岡原発からは100km以上離れていると思いますので、風向きからいえば、名古屋市は磐田市よりははるかに安全だと思います。

いずれにしろ、事故が起きた直後に、情報確認が出来ないまま、避難を開始する事は交通渋滞などによるパニックを回避するために、放射能防災の場合はまずは屋内退避をして、家庭内であれば遮蔽する用具や避難準備の防災具グッズを準備して放射能の雲をやり過ごす方法も家族で話し合っておくことが大切だと思います。

 

<質問>

・子どもや夫になかなかやわらかく伝える事ができません(馬場さんのお話を何度も聞いているのに・・・)こわい顔をせず、楽しくどのように伝えるようにしたら良いか心の切り替え方がまだ上手くできません。

【お答え】

家族の中では、つい甘えも出せて、地のままの会話や不安をぶつけてしまう事があると思います。私も、なかなか上手な伝え方が出来ませんが、大切な事を話す場合“自分もこういう風に言われたら、自分の気持ちを話せるな・・”と思うセリフを意識して、子どもたちに使うようにしています。

「私は~~思うけど、あなたはどう思う?」「こんな話を聞いたのだけど、どう思う?」「こんな時、私はどうしたら良いか分からないのだけど、何かいい方法があるかなぁ?」など、子どもの気持ちを聴けるように、話を持っていったら会話がうまく流れると思います。

なかなか、夫には準備した言葉を使えませんが、夫には感謝の言葉をなるべく多くつたえるようにしています。

「彼方が~~してくれたので、安心できたよ」とか「いつも子どもたちのために、ありがとうね」

「私だと上手く言えないけど、子どもたちは彼方の事を信頼しているから、ちょっと話してみてもらえない?」と手短に用件だけ伝えるようにしています。

我が家は男性ばかり(子どもも2人とも男の子)ですから、要点をしっかりと伝え、相手の気持ちをたくさん聞ける雰囲気を作ればよいと思います。

その他は、日常生活の中でどんな小さなことでも良いので、嬉しかった事、感動した出来事をさりげなく話しようにしています。

大人はこんなことを喜んだり、感動したりするのだな・・と分かってもらうと、子どももそういう経験をした時、話してくれるように成長します・・よ。子育ては家族で、日常生活を豊かに共有する事だと思います。

 

<質問>

主人の実家が浜岡原発2km圏内にあり、今後浜岡に住む可能性が高いです、私としては少しでも離れている場所(磐田市希望)なのですが、主人は地元に戻りたいという希望が強く、住む場所について意見が合わずにいます。私自身は小さな頃から原発は怖いものという思いが強いのですが、主人は育った場所だけに、怖いものと思うより、今まで何もなかったことや、大事な場所という思いの方が強いです。

現在2才の子と、これから産まれる第2子と、不安をなるべく拭っていくために、もっと色々なことを学ばなくてはと感じています。浜岡に同様のシステムや勉強会があるのか、知りたいです。こうした会がまたあれば主人と参加したいと思います!!

 

【お答え】

お気持ちはよくわかります。安心してご実家に帰れるように、はやく浜岡原発が不要になる時が来ると良いと思います。原発は必ず、無くなります。それが直ぐなのか、いつになるのかまだ分かりませんが、誰もが原発を動かす限り、処理できない核廃棄物を出し続ければ、日本中、住むところがなくなる事に気づいています。ですから、電気がないと暮らせない=原発がないと電気が使えない、ではない事をはっきりと知って社会を創るようにしたら良いと思います。

原発だけが健康に障害を与える事ではないので、ご主人の気持ちを原発問題だけで否定することの無いように、無用なものを作って、買って、ごみに出す生活を見直していく事も大切だと思います。

たとえば、原発はなくても農業生産地では単位面積当たり世界一の多くの農薬を使用しているのが日本です。農薬は細胞を傷つけ、神経作用があります。化学物質の工場が街中にある事もあります。

原発について、勉強会をしているグループが静岡県内でたくさんあります。インターネットでも情報は流れてくると思いますので、ゆっくりとご主人と一緒に、考えるチャンスを作っていってください。

 

<質問>

・放射線により胎児・乳児でDNAが損傷した場合、(大人の場合は食べ物で修復できることはわかったけれど)、その後正常に進化・変化することはあるのでしょうか?

【お答え】

胎児や乳児のDNAが損傷した場合、DNA1個の傷つきが即、生体の奇形や臓器・機能障害が起こる可能性は低いですが、胎児や乳児の成長期に二重らせん解放し、そのDNAの複製を行っていく時期にDNAの損傷が起こった場合は、大人のようなDNA複製機能は、残念ながらないというのが通常の考えです。しかし、IPS細胞のような細胞が現実に発見されていますから、今後、DNAの補修機能が発見されるかもしれません。細胞もDNAも生きていますから、より良く環境に適応し、変化する事も無いとは言えません。そして、人の脳神経細胞の傷つきは、修復されることはないと言われていますが、そのため、脳神経細胞の障害を、末端の手足を動かす事によって、脳神経に迂回路を作り、失った機能を補完する機能を育てるリハビリが行われています。

 このように、脳や神経の場合、適切な栄養と刺激によって細胞の修復は可能であると知られています。